越前水仙×越前焼 MIRAI プロジェクト始動① ~若い感性を秘境の花集落に~ – Misaki Creators

越前水仙×越前焼 MIRAI プロジェクト始動① ~若い感性を秘境の花集落に~

投稿者 :TakanoriYamauchi on

◆越前焼最年少・吉田雄貴さんとコラボ、1年かけ商品化へ

越前水仙の里・梨子ケ平。この高台に立つと、海の向こうにどこまでも、青い空が広がります。

地上には緑色のじゅうたん。その上に、点々と白や黄色。澄んだ香りが風に漂います。

この景観に、アートに通じる若い感性をマッチングさせたら、どのような品が生まれるのだろう。

そう考え、連携いただくことになったのが、越前町の平等(たいら)という集落で陶芸を営んでいる20代の吉田雄貴さん。

越前焼産地では最年少の作家です。

京都精華大学を卒業してから間もなく6年。

父の工房の一角に自身の作業場を設け、「暮らしの中に自然に溶け込み、日々手に取ってもらえるような器を作っていけたら」と、創作に励んでいます。

目指しているのは、850年の伝統を刻む越前焼本来の素朴な味わいを大事にしつつも、「新しいセンスがバランスよくマッチングした作品」。

そう語る吉田さんの想いが伝わるのが、次の写真です。

創作を始めて初期の頃に手掛けた一輪ざしです。

実は、この品。若いセンスを見込んだ地元の酒蔵「丹生酒造」さんとの企画で、日本酒とのセット商品向けに手掛けたものです。一義的にはお酒を入れて販売する徳利ですが、飲んだ後は一輪ざしとして活用いただこうという蔵元の想いを体現したものです。

20代の挑戦心が伝わってくる品です。

そんな吉田さんにとって、越前水仙の畑や、海の自然は新鮮でした。

梨子ケ平を初めて視察に訪れた昨年12月初旬、区長(集落の自治会長)滝本正美さんの案内で、白い花が咲き始めた名所「千枚田水仙園」の畑の中を歩いたり、収穫後の選別作業を見学したり。

同じ越前町でも、山奥にある越前焼の里とはまた違った解放感と、空気のさわやかさを感じたといいます。

「花の白、茎や葉の緑、海と空の青。どれもいい色。でも、人間にはつくれない色彩。この雄大な自然に、自分が少しでも近づいていけたら」

そう語る吉田さんの表情に、創作の新しい力が宿るのを感じました。

☆☆☆

岬じまん編集部は、次の開花シーズンに向けて吉田さんと連携。これから1年ほどかけて、越前水仙の里の「場」の力をモチーフに、オリジナルの商品開発に取り組みます。

吉田さんには、開花期間中や咲き終わる春以降も何度か通っていただき、住民たちとも交流いただきます。その過程で得たインスピレーションをもとに、新しい時代にマッチングした品を一緒に考えていきます。

名付けて「越前水仙×越前焼 MIRAI プロジェクト」。

越前水仙の里は、魅力的な秘境の花景観が広がりますが、栽培を担う住民たちはいま、過疎高齢化や獣害といった深刻な課題を抱え、今後の継承に不安を抱いています。

吉田さんのような若いクリエイターとの交流や、そこから生まれる創作の先に、課題を解決し、新しい未来を拓く手掛かりがあるのだと考えています。

「この原風景的な色彩からインスピレーションを得て、すてきなものを作ってみたい」と吉田さん。未来を印象づけるどのような品が生まれるのか、楽しみです。

また、創作を通して、この地に若いエネルギーをもたらしたいと考えています。交流や創作の様子はSNSページで随時、発信していきます。

☆☆☆

編集部では、MIRAI プロジェクトのスタートを受け、吉田さんがかつて制作した一輪ざしを、越前水仙の切り花とセットで販売する商品プランをオンラインショップにアップしました。

切り花のオリジナル商品「農家の顔の見える越前水仙」3枚葉30本と、吉田さんの一輪ざし5色のいずれかの1点をセットで販売しています。

一輪ざしは各色2点限定で、水仙が収穫される1月末までの期間限定での販売です。

吉田さんは、かつて制作したこの一輪ざしを試作品と位置づけ、形や色具合をさらに磨きをかけて仕上げようと、創作に取り組んでいます。

写真からは、これまでの越前水仙のイメージにはあまりないような、ライトでカジュアルな雰囲気が伝わってきます。皆さまに完成品をお届けするのが楽しみです。

 × × ×

越前焼の作家が持つ芸術的な感性を越前水仙の里とマッチングさせ、この地域に新しい風を吹き込む「越前水仙×越前焼 MIRAI 」。

このプロジェクトは、情報紙「MISAKI CREATORS ORIGINAL」の創刊(2022年1月号)を記念した企画にも位置付けてスタートしたもので、紙面では特集を組んでいます。

実は、紙面ではもう一人、スポットを当てた越前焼のすてきな連携作家がいます。コーエンれい子さん。こちらは、次回のブログでご紹介します。

また、MIRAI プロジェクトは、先行して、若狭塗や若狭めのう細工の連携クリエイターとも、それぞれ着手しています。

一過性の商品企画ではなく、長い月日をクリエイターと歩みながら伝統の生業や資源の未来を築くこれらのプロジェクト。「MIRAI」シリーズとしてリンクさせ、若狭湾を囲んで福井県の誇る伝統的工芸品を盛り上げていく計画です。


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